大統領専用車

リンカーンは、キャディラックと並んでリムジンを合衆国の大統領専用車として提供して来た長い歴史を持つ。

初めてリンカーンがホワイトハウスに納入されたのは1924年、カルビン・クーリッジが合衆国大統領を務めていた時代だった。この車はクーリッジ、ハーバート・フーヴァーの二代の大統領に仕えている。

1942年、フランクリン・ルーズベルト時代のホワイトハウスに納入されたのは「サンシャイン・スペシャル」という愛称で親しまれた巨大なリンカーンV12オープンカーである。ルーズベルトがフォード工場を視察するのに合わせ、ヘンリー・フォード自らの命令で製作された。1940年の製造中止後もストックされていた大型リンカーンのモデルK(1939年型)シャーシを延長、これに1942年型リンカーン・ゼファー似のボンネットと、サッシュ付防弾ガラス窓を備えたオープンボディを載せたものであった。ルーズベルトと次代のハリー・S・トルーマンによって1950年まで愛用され続けた。

「サンシャイン・スペシャル」が引退した年に納入された専用車は「バブルトップ」というニックネームの、1950年型リンカーン・コスモポリタンのストレッチバージョンであった。客室部分の屋根が、当時最新素材である透明なプラスチック製になっているのが特徴で、トルーマン・アイゼンハワー・ケネディ・ジョンソンと4人の大統領に仕えた後、1965年に引退した。

ケネディが大統領に就任した1961年、リンカーン・コンチネンタルのオープンカーがホワイトハウスに納入されるが、この車は1963年、ダラスで起きたケネディ大統領暗殺事件の主役を演じ、史上最も有名な大統領専用車として人々の記憶に刻まれた。しかし実はこの「ケネディ遭難車」は、翌1964年に1964年モデル用グリルへ交換され、クローズドトップ仕様に改造の上でリンドン・ジョンソンの公用車に再充当されている。その後1968年、ジョンソンの在任期間中に再びコンチネンタル・リムジンが納入されている。

1989年に納入されたリンカーンが現在のところ最後の『プレジデンシャル・リンカーン』である。ライバルのキャディラックは1983年、1993年、2001年、2005年にリムジンをホワイトハウスに納入している実績を誇っているのに比べ、やや低調なところである。